国際大学GLOCOM客員研究員の林 雅之さんが、内閣官房の「第6回ロボット革命実現会議」、『ロボット新戦略』などについてまとめて報告している内容が参考になる。
欧米の先進国や中国などで政府主導のロボット関連のプロジェクトが相次いで立ち上がるなど、政府も巻き込んだロボットを巡る新たな国際競争が始まっているようで、例えば、米国が2011年に公表した「National Robotics Initiative(国家ロボットイニシアティブ)」では、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、航空宇宙局(NASA)、農務省(USDA)の4団体が、人工知能分野や音声や画像認識などの分野を中心とした次世代ロボットの基礎研究に対して毎年数千万ドル規模の支援を実施しているという。
国内では、「日本再興戦略」改訂2014の中で、「ロボットによる新たな産業革命」として、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、世界に先駆けての課題解決、企業の収益力向上、生産性向上による賃金の上昇を図るといったテーマを掲げている。
政府の新戦略で示すロボット革命で目指す社会としては、以下の3つをあげている。
(1)ロボットが劇的に変化(「自律化」「情報端末化」「ネットワーク化」) 自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボット化
(2)製造現場から日常生活まで、さまざまな場面でロボットを活用
(3)社会課題の解決や国際競争力の強化を通じて、ロボットが新たな付加価値を生み出す社会を実現
さらに、ロボット革命を実現するために、以下の3つを柱としている。
(1)日本を世界のロボットイノベーション拠点とする「ロボット創出力の抜本強化」
(2)世界一のロボット利活用社会を目指し、日本の津々浦々においてロボットがある日常を実現する「ロボットの活用や普及(ロボットショーケース化)」
(3)ロボットが相互に接続しデータを自律的に蓄積、活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際標準の獲得などに加え、さらに広範な分野への発展を目指す「世界を見据えたロボット革命の展開・発展」
ロボットイノベーションの拠点として、現場における革命実現のための産学官を分厚く巻き込んだ推進母体となる「ロボット革命イニシアティブ協議会」を設置するとしている。
ロボットの利用や活用では、「ものづくり」「サービス」「介護・医療」「インフラ・災害対応・建設」「農林水産業・食品産業 」の5分野を重点分野として設定し、2020年に向けた戦略目標とアクションプランを策定する。
研究開発の分野では、ロボットのためのコアテクノロジである人工知能やセンシング・認識、駆動(アクチュエータ)・制御についての次世代の研究開発を強化するとともに、ロボットOSなどのミドルウェアにおけるソフトウェアや、通信などの機器間連携に関する規格化や標準化に取り組むとしている。
人工知能(AI)では、大量のデータから学習する「データ駆動型」と既存の知識から推測する「知識推論型」、そして、脳の部位を模したAIをモジュール化して、脳の情報処理を模倣した「脳型」などの研究開発の必要性をあげている。
ロボットOSでは、米国のシリコンバレーで、米Willow Garageが開発し、「Open Source Robotics Foundationが」が維持管理し、オープンソースの「ROS(Robot Operating System)」が提供されており、多くの開発者が参加し、ROS対応のソフトウェアを開発している。また、Googleもロボットベンチャーを相次いで買収し、ロボットOS“Android-R”を開発していると噂されている。
日本においてもさまざまなOSが開発されているが、ロボットの普及が進むにつれて、ロボットOSの役割は大きくなるだろうとしている。
ロボットと共存する社会の実現には、人(人間の意識改革)×プロセス(制度・規制改革)×テクノロジ(ロボット技術)の三位一体となった取り組みを、中長期的な視野に立ち行動していくことが大切になっていくだろうというのは尤もだと思う。
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