MIT Technology Reviewの「ブレークスルー・テクノロジー10 2017」記事に挙げられている項目は参考になると思う。
共通点は持続性で、経済や政治に影響を与え、医学を改善し、文化すら変える力があるとし、一部はすでに利用可能だが、実用化までに10年以上かかるテクノロジーもあるようだ。
(1)自動運転トラック
米国の幹線道路では、じきに運転席に人がないトラックを目にするようになるだろうというのは、尤もだと思う。
ただし、巨大なトラックは制御が難しく、現時点では、自律運転の実用化で1700万人のトラック・ドライバーの職が奪われるとはいえない、というのもよく理解できる。
(2)麻痺の回復
脳インプラントの活用は目覚ましい進歩を遂げつつあり、無線で神経信号を送信し、失聴、失明を回復させたり、脊髄損傷で失われた体を自由に動かしたりできるようになるというのは、非常に有用な技術と思うが悪用される危険はないのだろうか。
(3)顔で決済
中国では顔検出システムが決済や施設への入場を許可し、犯罪者の逮捕にまで使われているらしく、他の国も続くだろうか?とある。
(4)実用的な量子コンピューティング
グーグルやインテルなどの研究グループの成果が、これまでにない力を秘めたコンピューターの開発に王手をかけているようだ。
(5)360度自撮り
360度カメラが全世界の出荷台数でカメラ全体に占める割合は、昨年の1%から今年は4%に伸びそうだという。
研究や娯楽、報道にまで活用されそうで、360度映像に視聴者が慣れれば、VR産業の立ち上がりにもつながるというのは的を射ていると思う。
(6)熱太陽電池
「太陽熱光起電力」は、可視光線から電気を直接作るのではなく、いったんさらに広い波長の太陽光を熱に変換してから可視光線に変える手法で、蓄熱することで、雨の日でも夜でも途切れずに発電できる太陽光発電が実現するもので、期待できるかもしれない。
(7)遺伝子療法2.0
命に関わる遺伝子の突然変異を抱えている子供に対し、骨髄移植を受けさせる以外選択肢はなかったが、適合する骨髄はなかなか見つからないのに対し、免疫システムを破壊する遺伝子を取り替える治療があるという。
科学者が遺伝性疾患の治療を妨げてきた基礎的な問題を解決したことで、一部の希少疾患を治療できるようになり、今後は、同様の手法により、がんや心疾患等、一般的な病気の治療が進展するだろうという。
(8)細胞アトラス
人間の体はどんな細胞でできているのか、約37兆個の細胞ひとつひとつを詳細に解明し、位置に番号を割り当てる「細胞アトラス」プロジェクトが進行中らしい。
医薬品の探索を加速させるような、生物学における高度な新モデルを科学者に提供してくれるはずだという。
(9)モノのボットネット
家庭用ガジェットにネット接続機能が追加されて便利になるほど、ボットネットの攻撃性がさらに高まる副作用があるというのは、尤もだと思う。
低価格なIoT機器は一般的にセキュリティが低いか、セキュリティが全く考慮されておらず、ハッカーは大した手間をかけることなく機器を乗っ取れるため、同時に複数のサイトを停止させてしまう巨大ボットネットの構築は、かつてないほど簡単になったという。
(10)強化学習
プログラムで判断させるにはあまりに複雑な用途でも、強化学習なら機械が試行錯誤することで、上手なやり方を自分で獲得でき、あらゆる場面で適切に判断する自律運転車の実現にも欠かせないというのは、尤もだと思う。
IT起業研究所ITInvC代表 小松仁