「LSIとシステムのワークショップ2014」での富士通研究所フェロー・IEEEフェロー田村泰孝さんの「Moore則の終わる日- 立ち位置の確認・過去の反省・今何をするか -」講演内容が興味深い。
演算性能を上げるための課題として、
‥杜聾┐慮紊難しくなっている、
∪澤廛灰好箸上昇している、
Mooreの法則が終焉しそうなこと
を挙げている。
電力効率は90nm世代になってから、それまでスケーリングファクターXの3乗で改善していたものが、Xの1乗でしか改善しなくなっており、今後10年間でせいぜい2~6倍程度しか向上は見込めないという。
設計コストはこれまでもこれからもXの-1.2乗で上昇するとし、年率換算で11%上がるという。
Mooreの法則は2020年には終焉を迎えるとしている。
対策として挙げているのが、chiplet技術で、規格化した小規模サイズのダイを開発し、それをインターポーザーのようなものの上に載せて、ダイの間を接続するもののようだ。
必要なダイのみ稼働させて消費電力を下げ、ソフトウエア処理をダイとして専用ハードウエア化することで電力効率を上げ、ダイの再利用性を高めたり、ダイの流通経路を整備することなどで設計コストに対応するとしている。
さらに、Mooreの法則の終焉により、2流の設計者が駆逐され、実力を持った1流の設計者が求められるようになるというのは、厳しいが適切な予言かも知れない。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140527/354261/
RIETI後藤晃ファカルティフェローの、どの程度イノベーティブだとイノベーションと言えるかについての話が面白い。
科学技術政策研究所の調査によると、
,△襯メラフィルムメーカーが、世界で初めてカメラフィルムの技術を液晶ディスプレイの保護フィルムに使った事例、
∪宿覆両淵┘猷修鮨覆瓩討い襪△襯瓠璽ーが、家庭用大型冷蔵庫の最新機種の年間消費電力量をさらに5%少なくした事例、
あるアンチウィルスソフトウェアの販売会社が新種のコンピュータウィルスに対応するウィルス定義ファイルを配信した事例
で、イノベーションと思うと回答したのは、
日本人では34.5%、14.9%、7.9%、
米国人では54.1%、32.4%、32.3%、
ドイツ人では46.4%、30.4%、23.0%
というもので、米国人はそれをイノベーションと思うという比率が高く、日本が一番低く、ドイツはその中間の結果だという。
国際比較の際には、国によるシステマティックなバイアスに留意しないと、調査結果の解釈が間違ったものになってしまう危険性があるという指摘は尤もだと思うし、妙に卑下するのも無益だと感じる。
http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0397.html
Techon誌の「人工光合成:循環型エネルギー社会の実現を目指す未来技術」記事が、簡潔で分かりやすい。
太陽光電池や風力発電など、再生可能エネルギーに関する研究も進んでいるが、日本の総発電量に占める割合は今のところわずか1.6%であり、短・中期的には化石燃料を代替するエネルギーになるとは思えないというのは残念ながら現実の実態だろう。
バイオ燃料自体はカーボンニュートラルであっても、生産から消費までのすべての過程を通じてみれば、追加的な二酸化炭素が放出されている可能性は否定できないし、地球上の全耕地面積でバイオエタノールの原料を栽培しても、現在消費されているガソリンを置き換えることができないことや、副次的に生じる食糧問題などの大きさを考えると、バイオ燃料を中心的な代替燃料として想定することは適当ではないという意見も根強いようだ。
一方、植物は、光合成によって太陽光と二酸化炭素、水からブドウ糖を生成し、ブドウ糖は醗酵させればエタノールのような燃料となるわけで、ここに人工光合成技術が注目されることになる。
プロセスとしては、水を水素と酸素に分解する反応、発生させた水素を大気中の二酸化炭素と反応させ炭素化合物を生成する反応に分かれる。光を吸収してそのエネルギーで水を分解する光触媒として、波長400nm以下の紫外光から最近は可視光でも水素を発生できる触媒が、研究の焦点となっているようだ。
さらに酸化チタンから、東京大学の研究グループは、非酸化物系の光触媒(オキシナイトライド、オキシサルファイド)、インドのバーバー原子力研究所は、酸化チタン(TiO2)を分散させる支持材としてジルコニア(ZrO2)を用いる技術、米ロチェスター大学は、一般的な光触媒と、カルコゲン(第16族元素)を含むキサンチリウム化合物と電子ドナー(TEOA)からなる水溶液に400~850nmの光を照射して水素を発生させる手法など、多様な組織が多様な研究を進めているようである。
次の水素と二酸化炭素から燃料の原料となる炭素化合物をつくるプロセスはさらに難しいようで、中国科学院、カナダのアルバータ大学、英国のベンチャー企業Air Fuel Synthesis社などの他、豊田中央研究所やパナソニック先端研究所など国内勢も先端を走っている模様で、経済産業省と文部科学省による「人工光合成プロジェクト」の長期的なバックアップも活かして成果を期待したい。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140523/353820/?ST=energytech&P=1