NRIの未来創発センターは、昨年12月、英オックスフォード大学のマイケル A.オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と共同で、労働政策研究・研修機構が「職務構造に関する研究」で分類している601の職種について、人工知能やロボットにって代替される確率を試算し発表している。
10~20年後に、現在の日本における労働人口の約49%が就いている職業は、高い確率(66%以上)で人工知能やロボット等に技術的には代替することが可能であることが分かったとしているが、上級研究員の寺田知太さんが、最近、「『労働人口49%の仕事が人工知能やロボット等に代替可能に』の真意」を説明している内容が興味深い。
コンピューターの計算能力・データ量が飛躍的に向上することにより知識や経験の蓄積が必要で高付加価値とされた職業を技術が実現することができるようになり、同時に、ディープラーニングのようなアルゴリズムの革新は、これまで機械では不可能とも思われていた職業への技術活用が可能になるというわけである。
代替可能性のある労働人口比率が、英国(35%)や米国(47%)と比較して、日本の比率が高い理由として、欧米ではすでにコンピューター化や機械化されている業務や職種が、日本ではまだ人に任されていることが遠因である可能性を指摘しているのはよく理解できる。
機械化される仕事がある一方で、新しい仕事も生まれるという点は救いになるが、人がかかわるからこそ価値を発揮できる業務とは、創造性、他者との協調性が必要な業務や、非定型な業務としているのは尤もだと思う。
労働力不足を見据えて、外国人労働者や移民の受け入れ策が議論されているが、労働力不足だからこそ、テクノロジーを受け入れる余地が出てくるわけで、日本企業にも日本全体にとっても、新たなサービス創出や、組織や業務のあり方、働き方を改善していくチャンスになるはずで前向きに未来をとらえていきたいというのは、うなずける。