在米ジャーナリスト・リサーチャー小池良次さんが、テクノロジーベンチャーのIPOは急激に減少している一方、VCに代表されるプライベート(非公開)市場で、企業評価額が10億ドル(約1200億円)を超える通称「ユニコーン」と呼ばれる巨大ベンチャーが着実に増え、今やテクノロジーベンチャーを支える主役はプライベート市場に移りつつあると伝えている。
シリコンバレーには約5000社のベンチャー企業があるようだが、彼らが目指すのは株式市場への新規上場ではなく、インテルやアップル、グーグルやオラクルといった米国ハイテク業界のグローバルリーダーに会社を売却することだと改めて認識する。
これには、グーグルやフェイスブック、アップルなどが、優秀な人材の確保を兼ねて数百万ドル程度で次々と買収しているタイプで、サービスや製品開発向けの資金調達、「アーリーラウンド」が終わったベンチャーを買収するものと、12億ドルでデータストレージ大手EMCに買収された米ビルタストリームのように、アーリーラウンド後もVCから「シリーズB」や「エクスパンション・ファンド」などと呼ばれる資金調達を続けて成長を狙うタイプがあるようだ。
上場企業に課される情報開示義務は厳しくそのためのコストは膨大で、株価を維持するために短期的な収益目標を優先しなければならない一方、長期的な投資をともなう研究開発や製品・サービス開発の優先度は下がるなど、テクノロジーベンチャーがIPOを嫌うのも理解できる。
長期的なビジネスを基本とするため、デメリットが表面化しにくいバイオテクノロジー企業が、現在IPO市場をリードしている状況もここからきているようだ。
日本でも近年、VCの活動は活発化しているとはいえ、世界の経済動向を敏感にキャッチして、グローバルなスタートアップ育成を展開する米国のVC業界と比べると、目を覆いたくなるほどその差は広がっているというのは、残念ながら的を得ているのかもしれない。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO93837820Q5A111C1000000/